かつては、大和撫子の必需品として誰もが使っていた、日本伝統の化粧品「椿油」。
化学合成された化粧品が作られるようになってからは、相撲を行う力士さんの髪を結う物として使われ、若い女性の間ではあまり使われてきませんでした。
しかし、近年では椿油の効能に注目され、大手化粧品メーカーも「椿油」を配合した化粧品を製造するようになってきました。そんな椿油の原点を、ちょっとだけご紹介します。
浦上天主堂にほど近い「長崎市本尾町」。
ここに、純度100%の椿油を作る「五島椿本舗」さんの工場があります。
純粋椿油の原料として使われる「椿(ヤブツバキ)の実」は、五島列島や平戸で収穫された物など、長崎県内を中心として国産の物を使用しています。
また、五島椿本舗では「5000坪の自社農園」を保有。椿の育成にも力を入れていますが、大きな利点は「安心・安全な椿の実を収穫できる」という事。
直接、お肌に付ける化粧品だからこそ、安心な原材料から作りたいという思いから、様々な手段を考えて行動しています。
収穫された椿の実は、3週間から1ヶ月ほどかけて「天日で自然乾燥」させます。
原料として使われる椿の実は、かなりの膨大量。この五島椿本舗のスタッフが総出で並べていく乾燥作業は、毎年の秋の風物詩にもなっています。
天日による乾燥が終わると、椿の実を皮と種に分けて、搾油機で油を搾っていきます。
この機械を通して集められた椿油は、まだ黄色がかった乳白色で、濁りがある状態。
この状態の椿油を、「純綿100%の布」や「炭から作られた紙」、「特製の和紙」を使った濾過機で、十数回も濾過して精製していくのです。
とても時間がかかる行程ですが、ゆっくりとゆっくりと時間をかけて濾過していくと、濁り色だった椿油が綺麗な黄金色に輝く透明の液体に変化していきます。
まるで蜂蜜のような色合いに変わったこの椿油は、混じり物無しの純度100%。
昔は誰もがこの工程で椿油を作っていましたが、今となっては、とても貴重な伝統の逸品なのです。
五島椿本舗が作る椿油の原材料は、「椿の実」だけですが、この濾過する「時間」も、原材料の一つになっているのです。